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落語家 春風亭一蔵さん④ ボートレースとかけて、「女性の下着」と解く。その心は……

女流噺家が人気で、よく似ている落語界とボート界。でも決定的な違いが一つあります

 落語界一のボートファン春風亭一蔵さん。最終回もボート愛を徹底的に語ってくれた。


 最近つくづく思うんですよ、ボート界と落語界は似てるなあって。業界の規模がそんなに大きくなくってみんな身内で仲が良くて、実力的にいえばトップオブトップは男子だけど女子が人気なのもそっくり。

 落語界も最近は女流の噺家が増えてますが、あっちこっちから声がかかり、敷居の低いアイドルみたいな人気になっているんですよ。ボートだって女子リーグ戦をやればSGレース並みにお客が入るし、売り上げだって上がりますからね。

 ただ、一つだけ絶対に違っている点があります。それは収入(笑)。稼ぎは圧倒的にボートレーサーのほうが上で2桁、ヘタすれば3桁は違っていますから、そこだけはどうあがいたってかないません。

 それにしても今さらですが、ボートって楽しいですよね。例えば平和島に行くじゃないですか。1日やって負けて無料送迎バスで大森駅まで戻ってきて近くの居酒屋のカウンターで飲んでいると、隣に座ったおじさんもまず間違いなく平和島帰りですから。そしてまず間違いなく負けてる(笑)。そのおじさんと最終レースを振り返りながら友好を深める。こんなことができるのもボートレースの醍醐味だと思いますね。そもそも昔は僕の周りにはボートのことを語り合える友だちはほとんどいなかったですし、僕は前座時代、朝呂久という高座名だったのでマクラで「16(いちろく)、26(にいろく)、僕ちょうろく」とやっても全く受けない(笑)。でも、今はボートファンが増えて、ボートの話題で盛り上がることも多くなってきたのはとにかくうれしいですね。

YouTube番組「ボートレース放浪記」も面白いですよ

1日の軍資金がたった1300円という究極のYouTube番組

 ただ最近、僕が憂えているのはあまりにもバクチ的要素の強すぎる配信をしているYouTuberが多いということ。1レースに何十万も賭けて何百万になったとか逆に全部スッたとか、僕に言わせれば全然粋じゃないし、素人には真似できないじゃないですか。

 だから、低予算でもボートレースを楽しめることを皆さんに知ってほしくて僕がYouTubeでやったのが「ボートレース放浪記」。1日の予算1300円、そう、たった1300円でいかに楽しめるかという究極の舟券勝負番組です。何しろ予算1300円、入場料100円を払ったら1200円しか残らないという状況で舟券を買うので点数を絞らないといけないし、買い目も徹底的に考えて普段は買わない2連複やワイドを買うんですから。ワイドが当たって100円が140円になってあんなに喜ぶなんて普通はあり得ない(笑)。でも、これが思いのほか楽しかった。ぜひ皆さんもやってみてくださいよ。

 さて4回にわたった一蔵スペシャル(笑)も今回が最終回。そこで今後のボートに関する夢を語っておきましょう。僕の夢は落語家として売れてボート界に恩返ししたいということ。今はまだ一蔵ってボートが好きなんだ、やってるんだくらいの認識でしょうが、僕が売れれば、ボートって素晴らしいんだと多くの人にわかってもらえる。そんな存在になりたいですね。

 最後に「ボートレース」とかけて「色っぽい女性の下着」と解く。その心は「レースが一番でしょう」。

 おあとがよろしいようで。 =おわり

 (聞き手=清水一利)


▼しゅんぷうてい・いちぞう 1981年東京生まれ。高校卒業後トラック運転手などを経て2007年、春風亭一朝に入門。12年二つ目、22年真打ちに昇進。