• TOP
  • コラム

COLUMNコラム

コラム一覧へ戻る

世界のボートレース事情 日本発祥の競技が海外で広がる理由

 ボートレースは日本発祥の競技として知られていますが、近年、世界各地でその人気が高まっています。


 アジアや欧米では、ボートレースに似た競技やイベントが次々と誕生し、国や地域ごとに独自の発展を遂げています。本記事では、各国でのボートレースの現状や人気の高まりに加え、注目の大会や最新の動向を詳しく紹介していきます。


世界に広がるボートレース人気の理由とは

 ボートレースは1952年に日本で公営競技としてスタートしましたが、そのルーツは19世紀のヨーロッパに遡ります。


 1861年にパリで世界初のガスエンジン搭載ボートレースが開催され、その後イギリスやアメリカにも広まりました。日本では戦後復興の一環として導入され、娯楽としてだけでなく地域経済の活性化にも貢献してきました。


 この競技の魅力は、短時間で勝敗が決まるテンポの良さと、選手の戦略や技術が大きく結果を左右する点にあります。特に、モーターやプロペラの調整を選手自身が行う要素が、競技の奥深さを際立たせています。また、男女の区別なく同じ舞台で競えることも、多くのファンに支持される理由の一つです。


 近年、ボートレースの人気は日本国内にとどまらず、海外でも注目されています。その背景には、競技そのものの面白さはもちろん、国際的なスポーツイベントの増加や、新たなエンターテインメント需要の拡大が影響しています。


 たとえばアジアでは、日本の競艇を参考にした「韓国競艇(KBOT)」が2002年にスタートし、独自のルールや運営スタイルを取り入れながら発展を続けています。また、タイでは「ロングテールボートレース」が伝統競技として親しまれており、王室主催の大会も開かれるなど、スポーツと文化が融合したイベントとして定着しています。


 一方、欧米ではボートレースが地域密着型のスポーツイベントとして広がっています。特にイギリスでは、1829年に始まった「ザ・ボートレース(The Boat Race)」が国民的イベントとなり、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の対抗戦には毎年多くの人々が注目しています。アメリカでは「APBA(American Power Boat Association)」が全米各地でレースを主催し、特にフロリダやカリフォルニアでは観光と結びついたイベントとして、地域経済にも貢献しています。

韓国で注目を集める「韓国競艇(KBOT)」の魅力

 韓国の「韓国競艇(KBOAT)」は、2002年にスタートした比較的新しい公営競技ですが、着実に人気を拡大し、独自の進化を遂げています。その背景には、1988年のソウルオリンピックで使用されたミサリ漕艇競技場の有効活用がありました。


 オリンピック後、韓国政府は競技場の維持・活用策を模索し、競艇の導入によって新たなエンターテインメント市場の開拓と地域経済の活性化を目指しました。1991年に競輪競艇法が制定され、競技の法的基盤が整備されると、選手の育成や運営体制の確立が進み、2002年に初の競艇レースが開催されました。


 現在では、観戦型のスポーツとしてだけでなく、スポーツベッティングの要素を含む公営競技としても注目されています。


 韓国競艇の特徴の一つは、毎週水曜日と木曜日の週2回開催というスケジュールです。1節は2日間で構成され、1日あたり15〜17レースが実施されるため、短期間で多くのレースを楽しめるのが魅力です。レースはミサリ競艇場で行われ、1周600メートルのコースを2周する全長1200メートルの形式が採用されています。また、スタート方式にはフライングスタート方式を採用し、スタートタイミングが1秒以上早いとフライングと判定される厳格なルールが適用されています。


 賭式(券種)は単勝、複勝、2連複、2連単、3連複、3連単、3単複の7種類が用意されており、中でも「3単複」は1着を固定し、2着と3着の順序を問わないため、初心者でも挑戦しやすいと人気です。また、過度な投票を防ぐため、1レースあたりの投票上限額は100万ウォン(約1万円)に設定されており、健全な運営が行われています。こうした取り組みにより、韓国競艇は安全で楽しめる公営競技として成長を続けており、今後さらなる発展が期待されるでしょう。


イギリスの「ザ・ボートレース」その歴史と国民的な注目度

 イギリスの「ザ・ボートレース」は、オックスフォード大学とケンブリッジ大学が毎年4月にロンドンのテムズ川で競い合う、英国の春の風物詩ともいえる伝統的なレースです。1829年、オックスフォード大学の学生チャールズ・ワーズワースがケンブリッジ大学の友人に挑戦状を送ったことが、このレースの始まりとされています。


 最初のレースはテムズ川上流のヘンリー・オン・テムズで開催され、1836年に第2回が行われました。その後、1839年からは毎年の恒例行事となり、現在に至るまで続いています。


 ザ・ボートレースは、両大学の伝統と誇りをかけた一戦であり、選手たちは学業と並行して過酷なトレーニングを積みながらレースに挑みます。コースは全長約6.8キロメートル、スタート地点のパットニーからゴール地点のモートレイクまで、S字を描くように流れるテムズ川を漕ぎ上がるコースが特徴です。戦略や体力、チームワークが問われるため、非常にタフなレースとして知られています。テレビ放送やオンライン配信を通じて多くの人が観戦するだけでなく、現地ではビールを片手に応援する姿が定番の光景となるほど、国民的な人気を誇ります。


新たな舞台へ:世界で進化するボートレース競技

 ボートレースは、各国の文化や環境に適応しながら独自の進化を遂げ、今や世界中で親しまれています。


 たとえば、アメリカではドラゴンボートレースが盛んで、チームワークとリズムが求められる競技として人気を集めています。一方、オーストラリアではサーフボートレースが定着し、波と戦いながら海岸を駆け抜ける迫力あるレースが特徴です。また、技術革新も競技の進化を後押ししています。ボートの軽量化や高速化が進み、トレーニングにはデータ分析や最新の科学的手法が取り入れられるようになりました。さらに、パラローイングの導入など、多様な選手が参加できる競技環境の整備も進められています。


 オリンピックでもボート競技は重要な種目のひとつです。2024年のパリオリンピックでは、ヴィリエ=シュル=マルヌのウォータースポーツスタジアムでボート競技が開催され、8月にはパラリンピックのパラローイングも行われました。こうした国際舞台での注目度の高まりが、ボートレースのさらなる普及を後押ししています。


 2025年も、ボートレースの世界的な盛り上がりを象徴するようなローイングの国際大会が開催されます。ワールドカップは、6月にイタリアのバレーゼとスイスのルツェルンでそれぞれ開催され、各国の代表クルーが集結し、世界最高峰のレースが展開される予定です。また、世界選手権は9月に中国・上海で行われ、各国のトップアスリートが世界王者の座をかけて競い合います。


 今後もボートレースは国境を越えて広がり、競技スタイルの多様化と人気の高まりが一層加速していくことが予想されます。これからの展開に、ますます注目が集まるでしょう。