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インタビュー 元吉本芸人・イベント司会者 島あたるさん② 減量との闘い、ファン第一のプロ根性。心揺さぶられた2人の個性派レーサー

本紙をPRしてくれる島さん

たこ焼き1個を遠慮、ラーメンもひと口だけのストイックさ

 ボートレースの魅力に取りつかれた島あたるにとって、それは単なるギャンブルではなくなった。主役となる選手たちの人間ドラマに興味を持ち、2人の個性派レーサーに心を揺さぶられる体験をしたのだった。


島あたる(以下=島) ボートレーサーは芸人とよく似ている。同じ個人事業主で師匠や同期生、弟子がいたり、階級の序列もあって稼ぐ賞金もそれぞれ違う。ボクの中でものすごく投影できる部分を感じ、そこから真剣にボート選手を掘り下げてみようと思った。驚いたのは個人情報にさらされまくっているということ。

 ボクはいま人材業の仕事をし、労働局の指導もあってそこの取り扱いには極めて慎重になっている。

 ところが、選手たちは出身、生年月日、身長、体重、血液型……。獲得賞金も1円単位で丸裸にされる状況の中で、勝てば「イヨッ、大統領!」、負ければ「このドロボウ野郎!」でしょ。この精神力ってものすごいなと思った。賭け事の駒としてゼッケンつけて走ってるんだけど、われわれには娯楽でも選手たちはアスリート。娯楽なんかで走ってないんです。


 島はそれを実証するシーンに遭遇したことがある。相手は「ガッツ倉谷」と呼ばれてファンに愛された倉谷和信(61=大阪、今年1月に引退)だ。


島 食事後の2次会でラウンジに入ると、メンバーのひとりがたこ焼きを差し入れた。ボクらはパクパク食べてるんだけど、倉谷さんは手をつけない。ママが「冷めてしまいますよ」と勧めると、おもむろに口を開いたんです。「たこ焼きはこんなかわいい顔しとるけど、実はおにぎり1個分ぐらいのカロリーがあんねん。みんなのおいしい顔を見とったら、何や食べた気になったわ。もうエエ。下げて」。どうやらSGを控えた時期だったので減量していたようなんです。でも、たこ焼きを1個食べて明日に体重が1キロ増えるわけじゃない。そう思って「何でそこまでストイックになれるんですか」と尋ねると、ピシャリと言われました。

「お客さんは命の次に大切なお金を賭けてくれとる。それなら賭けられてるボクらは命を削って走らんとつじつまが合わん。お客さんに失礼や」。シビれましたね。カッコよくて鳥肌が止まりませんでした。

倉谷和信選手(©boatrace)

ひと口食べると、ラーメンどんぶりに水を

 もう1人は澤大介(52=三重)。どの枠からでも大外の6コースを選択し「ミスターチルト3度」の異名で人気を博すアウト屋の個性派レーサーだ。


島 数人でシメのラーメン屋に行ったら、澤さんはひと口ほど食べるとどんぶりに水を注いでるんです。わざとまずくして食べられないようにするために。そして帰り際、店の大将に「ごめんね。ボクは減量しないといけない仕事をしてるので残してしまったよ」と謝罪してる。大マクリの選手だから太るとスピードが出なくなって致命傷になるからなんです。この2人に限らず一流選手は私生活でも一流。普段の心構えが実にしっかりしている。逆に、こういうことのできない選手が二流なんですよね。

 

もはやどっぷりボートにはまる島。すると意外な女性と出会うことになる。それは――。 =つづく

(構成=長浜喜一)


▼しま・あたる 本名は島津江英樹。1970年8月3日生まれ、大阪市出身。吉本興業のお笑いカルテット「電車道」のボケ担当で人気を集め、引退後は全国のボートレース場でイベント司会者として活躍。派遣会社社長。