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寺田千恵選手(下)「女に勝たせてたまるか」の雰囲気をひしひしと感じた2001年のSG優勝戦

寺田千恵選手

 50歳を過ぎても第一線で活躍する寺田千恵選手。トップ女子レーサーとして今の女子人気をどう見ているのか、これからのレーサー生活をどう考えているのか話を聞いた。


 私がデビューした頃、女子レーサーは全部で100人くらいいたでしょうか。女子戦をもっとやるために女子を増やせという時だったんですよ。今も現役の山川(美由紀)さんや日高(逸子)さんは当時からすごいレーサーでしたし、引退した鵜飼(菜穂子)さんも全盛期。その頃の先輩たちは20代半ばから30代前半でしたけど、誰が強いとはまだ決まっていない、みんなが一斉にヨーイドンの時だったので誰もが張り合ってバチバチしていて怖かったですね。


 私のこれまでのボート人生でやっぱり一番の思い出は2001年6月、唐津ボートレース場(佐賀県)でのグランドチャンピオン決定戦競走で女子レーサーとして初めてSGの優勝戦、それも1号艇に乗ったことでしょうね。2号艇には植木(通彦)さん、3号艇には上瀧(和則)さんなどというそうそうたるメンバーによる戦いでしたが、それまでは何も感じなかったのにいざ優勝戦のボートに乗った途端(あ、1対5なんだ)と急に緊張してきて「女に勝たせてたまるか」という雰囲気をひしひしと感じましたね。特に唐津でしたから佐賀支部の上瀧さんは何があっても私に勝たせるわけにはいきませんよ。


 レースではスタートで遅れて5着に終わり、結果的には女子初のSGは私から20年後に遠藤エミちゃんが取ることになりましたが、その足がかりをつくったのは寺田千恵だとファンの皆さんに思ってもらえればうれしいですね。


 ボートは男子と女子が一緒に戦う競技です。ですからよく女子が男子に勝つにはどうしたらいいかと聞かれることがあるのですが、女子がとか女子だからというのはもう古い時代にはなっていると思うんですよ。ボートって男子であれ女子であれ、スタート力、旋回力、エンジン出し、プロペラ力、そしてもちろん精神力と総合的にいろいろなことができないとダメで何かひとつ欠けていてもSGに乗れるレーサーにはなれないし、SGで活躍するために少なくともこのうちの3つはトップレベルにないと勝てないと私は思っています。


 私も50歳を越えてレーサーとしてはもうそんなに長くはないので、この業界にいろいろな意味で何かお返しができたらいいですね。今、選手会で女子の理事もやらせてもらっていて、レーサーが走る環境を少しでもよくしたいと考えています。


 あとはもちろん舟券でファンの人に貢献するのも大事ですね。最近はなかなか勝てなくなってきているのは自分でも分かっているんですけど、その時その時でやるべきことは年齢とともに変わってきているので、それがどれだけできるかは日々考えてこれからも一走一走大事に乗っていくつもりです。


 そして引退したら私も主人(A1級の立間充宏選手)もゴルフが大好きなので、2人で近くに温泉があっておいしいものが食べられる全国のゴルフ場巡りをして楽しみたいですね。=この項おわり


(聞き手=清水一利)