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真中満さん(下)プロ野球のように、いきなり10勝とかの大型新人が現れないところがボートのすごさ

元ヤクルト監督の真中満さん

真中満さん(元ヤクルト監督)

 選手としてコーチ・監督として野球界で長く生きてきた元ヤクルトの真中満さん。2007年にマークしたシーズン代打最多安打31は今も日本記録だ。一流アスリートである真中さんが考えるスポーツとしてのボートレースとは?


 同じアスリートとしてボートレーサーたちはレース、僕らは試合と形こそ違いますが、その前の緊張感は同じでしょうね。でも、野球とボートではその度合いが違うと思うんですよ。というのも野球は失敗が許されるスポーツ。だってバッターは3割打てば一流だと認めてもらえますが、逆にいえば7割は失敗してもいいんですから。だから、その意味では気が楽なんですよ、バッターは。


 でも、ボートは人気の1号艇に乗っているレーサーになれば7割8割、場合によってはもっと高い確率で勝たなくてはいけないという状況の中で、しっかりスタートを決めなくてはいけない。


 しかも、もしフライングしたら重いペナルティーがあるわけですよ。


 それに、ボートはファンがお金を賭けているのでプレッシャーはかなり大きいはず。そういうふうに考えるとメンタルの部分は野球選手よりレーサーのほうが厳しいのかなという気もします。


 あともう一つ、野球界とボートレース界で決定的に違うなと僕が思っているのは、野球の世界では大学から鳴り物入りで入ってきていきなり十何勝もしたり、バッターなら1年目からクリーンアップを打ってレギュラーでバリバリやる選手も珍しくないのに、ボートレース界ではそんな選手が出てくることはほとんどあり得ないということ。デビューして1年も2年も勝てない選手がざらにいるのが現実で、新人のB2級の選手がA1級の選手に勝つのはまずあり得ません。それだけ経験が大事なスポーツで、しっかり積み上げていかないとやっていけない世界なんだなということを痛感しています。


 今、ボートレースでは女子戦が大人気ですね。僕もここ3年くらいは興味を持って見るようになりました。去年の3月、女性レーサーで初めてSGレースで優勝を果たした遠藤エミさんとか、一時に比べると男子レーサーに交ざって互角に戦える女子が増えてきました。他のスポーツは男女別でやることがほとんどという中でボートはもちろん体重差はありますが、それ以外はエンジンやボートなどレースの条件は全て同じで戦います。いかにして女子が男子を破るのか、そんなところに注目するのもボートの魅力になっているのかもしれません。


 最後にボートレースファンに言いたいのは選手の気持ちになってレースそのものを楽しんでほしいということです。舟券だけではなく、選手がどんな気持ちでそのレースに挑んでいるのか、どうやって勝とうとしているのか、選手目線で見るとレースがより面白くなると思いますよ。あとはあまり熱くならずにレースは前もって決めた予算内で……。これは自分自身にも言い聞かせておかないといけませんね(笑)。 =この項おわり


(聞き手=清水一利)