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ちゃらんぽらん冨好さん(中) 兄が引退。ところが今度は息子がレーサー試験に合格

舟券が買えない日々がつづく

 法的に問題はなくても選手の親族は舟券の購入を自粛――。兄のボートレーサー・和幸が現役引退し、やっと解禁かと思えたちゃらんぽらん冨好の前に再び壁が立ちはだかる。冨好はいったいいつになったら念願の舟券を買えるのか!


冨好 息子ですわ。兄ちゃんが引退する1年前に息子の祐真がレーサーの試験に合格したんです。高校まで野球をやり、卒業してバイトをしながら5回目の挑戦で受かった。でも本人はボートに全く興味がなく、大学に進むつもりやったんですけどね。ところが、7つほど受けて全部すべった。受験料3万5000円×7。24万5000円をドブに捨てたようなもんですわ。それでボクが「じゃあボートレーサーになればいいやんか」と勧めたんです。

 祐真は2012年5月に尼崎でデビュー。父が吉本芸人、おじは兵庫支部長を務めた和幸とあって話題を集めた。


冨好 そら息子ですから応援しましたよ。父親だから本場には入れない立場やったけど、気になって仕方がない。息子が走った新聞の出走表は今も大事に持ってますよ。実は福岡のやまと学校(現ボートレーサー養成所)を卒業する時に、専門局のレジャーチャンネルからお祝い金をもろうてね。「なるほど。これで息子さんの活躍を見てあげてくださいということなんやろな」と推測して加入しましたんや。

 大器晩成なのか。祐真の初1着は3年後、初優出は6年後と思うような成績を残せない。


冨好 せっかく専門チャンネルを引いても、息子はテレビに映らへんのです。なぜって5、6着ばっかりやから。映るのは舟券にからむ上位選手で、息子はピットアウトの時だけ。ほんの1分で終わりやからほんまにツラい。情けない話やけど、弱いからしゃあないわな。息子にとってボートは好きで飛び込んだ世界やない。ボート場に連れて行って「うわっ、かっこエエなあ」とその迫力に感動し、自分の仕事にしたいと思う子はやっぱり強くなる。でも息子は何も感じてなかったな。野球で鍛えた根性はあったけど、レーサーとしてのセンスに乏しかった。ボクに言わせれば「ヘタ」なんですな。

 

息子の冨好祐真

そら息子ですから応援しますよ。けど〝4S〟ならぬ〝4〇〟でして

 おじの和幸の存在はもちろん、祖父も大おじも父も大のボートファン。抜群の環境に置かれていた祐真の課題はどこにあったのか。


冨好 ボクが思うにレーサーに必要なのは4S。スタート力、整備力、旋回力、精神力。1個あればB1、2個でA2、3個でA1、4個でSGですわ。それなのに息子には1個もない。あるのは4O。おびえる、おじけづく、遅いスタート、オーバーターン。これじゃあ勝てまへんわ。

 この頃、冨好は日本テレビ系「お笑いスター誕生!!」で名を売り、ボート好きの芸人として本場でのイベント出演も増えていた。


冨好 予想トーク会は非常にやりにくかったね。「この選手がいいでっせ」と推奨したら「どうせ息子から情報をもろうてるんやろ」と勘ぐられる。どうしても奥歯にものが挟まった言い方になってしもうてね。だから開き直りましたんや。ステージ漫談で息子の4S、4Oのネタをやる。さらに「息子が峰竜太や毒島誠のようなスター選手やったらオモロないでしょ。ボクの息子なんですよ。弱いに決まってまっしゃろ。よう息子の舟券なんか買いますなあ」とか「みなさん息子の勝率を知ってまっか。3・14。円周率ですわ」とかね。これがバカウケ。芸人はお客さんに笑われてナンボやから「こいつ、オモロいなあ。息子の自虐ネタで笑わせとるで」となればシメたもんなんです。

そんな冨好がついに舟券購入の資格を手にする。その意外な理由とは――。

 =つづく

 (構成=長浜喜一)


▽本名=冨好 真(とみよし・まこと) 1960年、兵庫・尼崎市生まれ。79年に大西浩仁(現・幸仁)とちゃらんぽらんを結成して人気を博し、2008年の解散後はピン芸人として漫談など幅広い分野で活動中。吉本興業所属。