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名勝負物語⑤ あえて6コースに回り大マクリを決めたガースーこと菅章哉 最高のレース

菅章哉選手 ©boatrace

2021年9月 鳴門「大渦大賞」2日目。穴党ファン待望のシーンが

 今、そのユニークなレーススタイルでボートファンの注目を集めている選手がいる。ガーシーならぬガースーこと徳島支部の菅章哉だ。やまと競艇学校(現ボートレーサー養成所)時代は劣等生で、本人も「卒業できたのは同期生のおかげ」という。2009年にデビューするも2走目にフライングを切るなど、5カ月後に初勝利を挙げるまでにフライング2本持ちの状態になったばかりか、初勝利後もケガで半年間レースを欠場するなど当初は苦労の連続。

 その後はコツコツと勝利を重ねA1級に昇進するも、2019年11月から翌年3月にかけて3本のフライングを犯し、出走回数不足や事故点オーバーでB2級に降格した。しかし、菅はそこから試行錯誤を重ね、出走する枠順に応じてモーターのチルト角度を変えるとともに、それに合わせてプロペラを調整する現在のスタイルを確立。

 特に6コースに入るとチルト角を最大まで上げ、さらにプロペラを伸び型に仕上げて大外枠から一気にマクって万舟をしばしば演出するため穴党のファンに支持されている。だが、逆に選手の間ではSGウイナー茅原悠紀をして「カドの峰さんより6コースのガースーのほうが圧倒的に怖い」といわせるほど不気味な存在となった。

 そんな菅が自他ともに認めるボート界最強の男・峰竜太を打ち破りファンを喜ばせたレースが2021年9月16日、ボートレース鳴門で行われたG1大渦大賞開設68周年記念競走2日目の6レースだった。


峰竜太選手 ©boatrace

競り負けた峰竜太が「見事なツケマイだった」と称賛

 出場メンバーは①今泉友吾②森野正弘③小野達哉④菅章哉⑤宇佐見淳⑥峰竜太の6選手。峰が前付けを敢行し2コースに入るとチルトを3度に上げ、あえて6コースに回った菅は森野、小野らに抵抗されるも構わず峰をものみ込んで大マクリ。

 バックストレッチでは峰を1艇身リードして、ここからは4艇を置き去りにして菅と峰のマッチレースとなった。2マーク、峰が渾身のターンを決め2周目で菅を捕まえる。しかし、2周目1マークで外に開いた菅が峰にツケマイを浴びせて勝ちを収めた。

 レース後、菅が、

「一番やっつけ甲斐のある峰さんが相手だったので必死でしたが、自分としては最高のレースができました」

 と喜ぶと、峰は、

「前付けしたのは菅君を受けて止めたいと思ったから。お客さんもそれが見たかっただろうし。それにしてもいいツケマイだったね。お見事でした」

 と菅をたたえた。

 (清水一利)