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みんなのボートレース学校⑮ 「チルト3度」ってそんなにスゴイの? 

「チルト3度」で大活躍の菅選手(©boatrace)

大半は-0・5度か0度

 先日ボートレース多摩川で行われた「ボートレースオールスター」の開会式で「来られない皆さんの期待に応えチルトを跳ねます!」と宣言、大きな歓声を浴びたのが「チルト3度」を武器に大活躍しているガースーこと菅章哉。そのレースぶりから今、ファンから絶大な支持を受けている人気レーサーだ。

 チルトとはボートにモーターを取り付ける角度のこと。マイナス0・5~3・0度の最高8段階で調整ができるが、レース場によって制限があり、例えばコースの狭い戸田では0・5度までしか上げる(跳ねる)ことができない。チルトを下げると出足が良くなり、上げると伸び足が良くなるといわれるが、これはチルトを変えるとボートが水面と接する面積が変わるからだ。つまり、チルトを下げると接水面積が大きくなるので艇の初速が安定して出やすくなるのに対して、チルトを上げると接水面積が小さくなるためボートの速度が速くなるというわけだ。

 通常は、出足も伸び足もそこそこで、どのコースからでも戦いやすいことから、チルトをマイナス0・5度あるいは0度で使う選手がほとんどである。

 一方、ガースーがここぞという勝負の時に跳ね上げるチルト3度は出足や乗り心地、操縦のしやすさは全て犠牲にして、ただただ伸び足に特化した調整を目指したもの。そのためスタートをしっかり決め1マークを先マイできればそのまま先頭を譲らず1着でゴールできるが、半面、ターンでの小回りは利きにくいのでレース中盤で逆転されることも少なくない。

 SGやG1を何度も優勝しているトップA1級レーサーの茅原悠紀でさえ、以前チルトについて聞かれて「自分が思うように使いこなせるのは0・5度まで」とコメントしていることからも分かるように、チルト3度はプロにとってもかなりリスキーな冒険なのだ。

 いずれにしてもチルト3度は1着か6着かという極端でかつスリリングなレースになることも多く、その点でもガースーのレースがファンの注目を集めているのかもしれない。