• TOP
  • コラム

COLUMNコラム

コラム一覧へ戻る

落語家 桂三幸さん② 舟券はバイオリズムで買う。必ずやってくる「勝てそうな時期」

「そろそろ勝つ頃や」とわかったら、好きな選手でドカンと勝負

 落語家の桂三幸は駆け出しの頃から毎日のようにボートレース場に通っていた。しかも5年間も。うなるほど軍資金を持っていたわけでもなく、生活はむしろ苦しかった。ということは、舟券でどれほど稼いでいたのだろうか。


桂三幸(以下=三幸) 稼げるわけないじゃないですか。ボロ負けですよ、ボロ負け。負け続けてばかりで回収率は50%もない。高級車1台分ぐらいは余裕で負けてまっせ。それでも続けられたのはレースを絞ったり、買い目の点数を少なくしたり、そして金額は基本100円。的中して「しもうた。1000円ぐらい買うとけばよかった」と思う時もあったけど、欲を出さずに豆券で勝負してましたよ。そもそも、どれだけ真剣に考えても舟券は当たらんもんだと思ってますから。

では、何を根拠にして購入しているのか。そこには独特の戦術があった。


三幸 バイオリズムです。ボクは毎月の収支をノートにつけていた。すると、ドカンと儲かる時期がやってくることを知ったんです。そこで「そろそろ勝つ頃や」と感じたら、もう枠番も関係なく自分の好きな選手を買う。そうしたらくるんですわ。人気のない穴選手でもくる。もうひとつ。レース途中まで外れている舟券でも、そこから入着圏外の選手が逆転して的中舟券となった時は見逃さない。「よっしゃ。オレのバイオリズムがきたぞ!」と、ここでも好きな選手ばかりを買う。こういう日は間違いなく勝ちますね。買った選手がきっちりくるんやからホンマ、不思議ですわ。

オッズ掲示板の⑥①の部分だけが光っている。買ったら万舟。皆さんは経験ありません?

何やらオカルトチックだ が、三幸のミステリー戦術 はまだある。


三幸 舟券が不調だと感じたら、ある人たちにすがるんです。まずは予想屋。100円でメモを仕込んで買い目を見る。それを参考にせず、わざと外して違う目を買うんです。次はユーチューバー。今はどこの場でも全レース生配信してるから「このゲスト、きょうはサッパリやな」というインケツを探し、あえてその人の予想を外して買う。最後は場内のファン。おっちゃんたちの予想話に耳をそばだて、評価の高い選手を捨てて逆に低い選手を買うんです。勝ち負けはともかく意外と楽しいですよ。レース場には毎日通っていたから、こんなことばっかり考えてましたわ。


極め付きはエスパー並み の超常現象だ。


三幸 駆け出しの頃、住之江のその年最後の年末開催で大爆発したことがある。1Rから舟券を買い、なんと12R中9Rが的中。ボクの舟券勝負の最高成績は現在もこの12分の9です。忘れもしません、その日はオッズが光ったんです。あるレースで3連単の表示板を見たら、アタマ⑥①の部分だけがピカッと光ってる。「ナンだ、これは!?」と目をこらしたけど全く消えない。何かのお告げかと思って⑥①全の4点を買ってみたら、これがきたんですよ。しかも万舟券。ビックリしましたね。すると、しばらくたったあとのレースでまた光った。今度は①⑥。⑥が全く人気のない選手だったから、①アタマでも①⑥の3連単は4点とも万舟券。そして二匹目のドジョウを狙って①⑥全を買ったら、これまたきましてね。あとで先輩の師匠に聞いたら「ワシは競馬場でオッズが光った。十数万円儲かったわ」と言う。こんなこと、あるんですね~。読者の皆さんは経験ありますか?


いよいよボートにハマっていく三幸だが、お目当ては換金だけではない。選手たちが演じる感動のドラマ。三幸が心を揺さぶられた3大レースとは――。

=つづく

(構成=長浜喜一)


▽かつら・さんこう 本名は井上幸浩(いのうえ・ゆきひろ)。1979年7月生まれ。愛媛県出身。愛媛大学時代に落語研究会に属し、2002年に桂三枝(現6代目文枝)に入門。寄席で活躍するほか、ボートレースびわこや住之江で予想トーク会を実施。吉本興業所属。