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コラム一覧へ戻る公開日
2024年12月20日
11:27
更新日
2024年12月20日
11:27
落語家 春風亭一蔵さん② 初日から最終日まで 一節間同じ場のレースに集中。原則、他の場には手を出しません
昔はモノクロの世界だったボート場が最近はオールカラーに
春風亭一蔵さんは落語界きってのボートレースファン。なにしろ父親に連れられ、小学生時代から“研究”を続けている。今回は舟券の買い方、楽しみ方を聞いた。
僕の舟券の買い方は他のボートファンとはちょっと変わっているかもしれませんね。というのは、ある場で今日からレースが始まるとすると初日に出場選手の顔ぶれを見て今回のこのメンバーなら面白そうなレースが見られそうだなと思ったら最終日まで一節間、その場のレースだけを買って他の場には手を出さない。ただ、SGやGⅠのレースをやっていれば一応見ておく。そんな楽しみ方をしているからです。
人にはよく「一蔵さんって買い目は何点とかって決めているんですか」って聞かれるんですけど、全然決めてないですね。そのレースによって5点だったり20点だったり、場合によっては1点ということもありますから。いずれにしても僕は一般レースでは本命は買わず穴しか狙いません。ただ記念は別で1号艇からヒモで配当に妙味がありそうなところを買うことが多いですね。購入金額だけは決めておかないとどんどん増えていってキリがなくなっちゃう。なので普通は1レース5000円、ちょっと勝負する時は1万円とかにしています。
最近、ボートレースをやる若い人たちがどんどん増えています。もう何十年も前からボートレース場に通っている僕にしてみれば、その昔はオジサンしかいなかったモノクロの世界だったレース場がオールカラーの華やかな場所になったことに時代の流れを感じますね。
弟子の白井選手(右)を祝福する今村豊さん
今村豊さんの涙に感動。この人間ドラマにもハマってしまった
ボートレースがウケている理由は何といっても初心者でも分かりやすいという点だと思います。何しろ1号艇の白から始まって6号艇の緑まで6艇の色さえ覚えたら、今自分が買った艇が何番目を走っているかが一目瞭然じゃないですか。
これが十何頭も走る競馬だったら自分の買った馬がどこにいるのかを見るだけでも大変。もう訳分かんなくなりますから。
あと、今は競輪も競馬も3連単がありますが、一番ハマったのってボートだと思うんですよ。2連単しかなかった時の30通りから120通りになって以前は3着と4着の競り合いなんて見てもいなかったのに、今は3周きっちり最後の最後まで楽しめますから。でも、買い目をケチってこの選手だけは3着までには入らないだろうと思って切ると、そういう時に限って来ることもしばしば。外れるのは潔く認めるけど、その3着だけはやめてくれ(笑)と何度叫んだことか。逆にいえばそれもボートの面白さなのかもしれないですけどね。
もう一つ、僕がボートの楽しさについて声を大にして言いたいのは、ボートには数々の人間ドラマがあるということ。
ボートファンの皆さんの記憶にもまだ新しい一昨年のSGグランプリで白井英治が優勝した時、自身はグランプリを勝つことができなかったレジェンド今村豊さんが弟子の優勝を自分のことのように喜んで涙していた姿に僕は心を揺さぶられるような感動を覚えました。
あれこそ長年僕がボートにハマっている理由でもあるんですよ。
=つづく
(聞き手=清水一利)
▼しゅんぷうてい・いちぞう 1981年東京生まれ。高校卒業後トラック運転手などを経て2007年、春風亭一朝に入門。12年二つ目、22年真打ちに昇進。