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コラム一覧へ戻る公開日
2024年02月14日
19:18
更新日
2024年03月06日
11:13
名勝負物語② テクニックのぶつかり合い 丸岡正典VS瓜生正義の死闘

優勝戦の1周2マーク 瓜生(外側)と丸岡の両選手
第55回「全日本選手権」優勝戦(2008年10月13日) 3周目2マークまで先頭争い
ボートレース史上に残る屈指の名勝負といえば、植木通彦と中道善博が死闘を繰り広げた1995年の住之江での「第10回賞金王決定戦」優勝戦を多くの人が挙げるはずだ。もちろんそれに異存はないが、屈指の名勝負としてもう1つ忘れられないレースがある。2008年10月13日、ボートレース丸亀で行われた「第55回全日本選手権」優勝戦だ。
主役を演じたのは1号艇・丸岡正典と3号艇・瓜生正義。どちらも卓越した操艇テクニックの持ち主として知られ、まさにその技の切れ味の凄さを互いに遺憾なく発揮し合ったのがこのレースといえるだろう。
スタートは丸岡が持ち前のダッシュ力を発揮し1マークを先マイ。
瓜生はマクリ差しを狙うもわずかに届かず、1周目バック直線コースではリードする丸岡に対して瓜生は舳先をかけていく。
2マークは瓜生が先マイ、丸岡は渾身の差しハンドルで艇を合わせる。
2周目1マーク、今度は丸岡が先マイ、外を瓜生が全速で握る。2マークも丸岡が先マイ、瓜生はもう一度全速で握るが、ここでも決着はつかない。直線では丸岡が1艇身リード。しかし、アウトコースから瓜生は必死に食い下がる。3周目2マーク、先マイする丸岡を外から大きく回りしろを取って全速で差し込みを狙っていく瓜生。先頭争いは最後の最後、丸岡が何とか瓜生を振り切って0・2秒差でゴールイン! SG初優勝を飾った。
名勝負物語① ボートレース史上屈指の一騎打ち 植木通彦VS中道善博

和田アキ子から祝福された丸岡選手
特筆すべきは、お互いノーミスだったこと
このレースで特筆すべきことは両選手にミスが全くなかったということだ。インコースが有利なボートレースでは基本的に抜きつ抜かれつのデッドヒートは起こりにくい。起きるとすれば選手がミスを犯した場合だ。
先に挙げた「第10回賞金王決定戦」でも植木も中道も後になって「ミスがあった」と口をそろえて語っている。ところが、瓜生と丸岡はミスらしいミスは全くせず、互いのテクニックの全てを駆使して最初から最後まであれだけの息づまる熱戦を展開したのである。
伝説のレースから16年、瓜生も丸岡も今なお現役で頑張っている。
丸岡は99年に85期でデビュー。同期には井口佳典、田村隆信、湯川浩司らがおり5人がSGを制覇するほどの人材が揃い、「銀河系軍団」と呼ばれていたが、それは当時世界最強で「銀河系軍団」と称されたサッカーのレアル・マドリードにあやかったものだった。
一方、瓜生は通算11回のSG優勝、20回のGΙ優勝を飾り歴代5人目となる通算獲得賞金25億円を達成。さらにボート界随一の人格者として知られる瓜生は、トップレーサーとして活躍する傍ら、22年6月には日本モーターボート選手会の会長に就任。多忙な会長職をこなしている。
(清水一利)